Speee DEVELOPER BLOG

Speee開発陣による技術情報発信ブログです。 メディア開発・運用、スマートフォンアプリ開発、Webマーケティング、アドテクなどで培った技術ノウハウを発信していきます!

DX事業本部のプロダクト開発プロセス(現在進行系)

デジタルトランスフォーメーション事業本部でプロダクトマネージャーをしています、渡邊です。本日はデジタルトランスフォーメーション事業本部(以下、DX事業本部)のプロダクト開発プロセスについてご紹介します。

取り組み中の内容も多く、あくまでも現時点を切り取ったスナップショット的な内容になりますが、2019年の棚卸しの意味も込めて、ログとして残しておきたいと思います。

DX事業本部の取り組み

DX事業本部では「リアル産業の情報流通をリ・デザインし、バリューチェーンを再開発する」というミッションを掲げ、歴史のある産業の非効率な情報流通を見つめ直し、オンラインとオフライン両方のネットワークをより良い形で繋ぐ取り組みを行っています。

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DX事業本部(イエウール)のプロダクト開発チーム

DX事業本部の事業のひとつでもある、イエウールは不動産売却・査定サービスにおいて、業界トップのシェアとなっており、不動産売買領域における提供価値最大化を目指し、大小様々な挑戦に取り組んでいます。

プロダクト開発チームでは少人数の開発プロジェクトを複数組成し、新規事業としてのプロダクト開発や既存の機能開発を行っています。プロジェクトの性質によって、営業やマーケ、CSも含めて職種横断でチームが組成されるのが、一つの特徴となっています。

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開発体制イメージ図。職種横断でワイガヤやってます。

プロダクトの位置づけ

我々はミッション/ビジョンの実現するための手段として、プロダクト開発を位置づけており、上段の「なぜやるのか(Why)」から考えを深化させ、プロダクトの計画書やロードマップを通してWhatを描き、実現確度を高めるためのHowとしてインセプションデッキや開発プロセスの最適化を行っています。

抽象的なミッション/ビジョンから具体的な取り組みまでが、一気通貫で繋がっていることが重要と考えており、各レイヤー間でそれぞれが好循環することを念頭においた上で、高速かつ継続的な学習ができるよう各水準における成果物を規定し、日々のプロダクト開発に取り組んでいます。

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DX事業本部のプロダクトマネジメント概念図

とある新規プロダクト開発の取り組み

ここでは、私がPMを務めている新規事業のプロジェクトを例として、DX事業本部のプロダクト開発のプロセスについてご紹介したいと思います。初期の課題発見は主にBiz-DevやPMを中心に行いますが、それ以降についてはデザイナーやエンジニアとともにチームを組成し、検証、考察を進め、事業として本格的に開発する意思決定を行うタイミングで再度キックオフすることが多いです。

開発メンバーにも初期のタイミングから段階的に入ってもらうことで、前述のWhy-What-Howの接合を全員が理解できている状態を目指しています。ざっくりですが、企画から3ヶ月から6ヶ月ぐらいのスパンで新規事業を立ち上げることが多いです。

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金曜日のwin-sessionでアウトプットお披露目してるところ

課題発見、仮説構築

課題発見のフェーズでは、とにかく業界課題、ユーザー課題にフォーカスします。不動産取引のバリューチェーンを細かく解きほぐし、不整合が起きている部分を特定し、テクノロジーによるアップデートの余白を探します。

ここでは、バリュープロポジションキャンバスを用いた定性的なアプローチや、イエウールのユーザーデータなどから、課題のタネを見定めていきます。

検証(Whyの精査)

見つけた課題のタネに対して、「課題の確からしさ」を検証します。ここではペライチのページを作成したり、既存サービスの一部を一時的に変更するなど、実用最小限の価値を用意し、ユーザーの反応を確認することで、自分たちが設定した課題が芯を捉えているかをできるだけ早く検証します。

このタイミングでは、確証バイアスが作用しやすいため、とにかく信頼できるデータを0から生み出すことが大事だと考えます。ユーザーニーズを肯定するようなデータをweb上から見つけ出すことも可能ですが、自分にとって都合の良いデータを集めがちなので、0からデータを取りに行く、というスタンスを重要視しています。

このあたりの内容は以下の書籍を参考にしています。

事業計画/プロダクト計画の作成

強度の高いWhyが見いだせたタイミングで、事業としての整合性を確認するために、事業計画書およびプロダクト計画書を作成し、課題と解決策の方向性が大枠として市場の要望を満たすかどうかを確認します。

DX事業本部では バリューチェーンの再開発により、従来の誰のどんなコストが価値として何に置き換わるのか、などの本質的な価値の構造について議論をすることが多いです。このタイミングでWhyを洗練させ、プロダクト開発のステップに進みます。

ユーザーインタビュー/プロトタイピング

「なぜやるのか」を整合させた後、Whatを定めるフェーズに移行します。ユーザーインタビューを行いながら、プロトタイプを作り、意図したユーザーストーリーが実現できるように具体的な形に落としていきます。

一発で正解は出ないことを前提に、この段階でもスピードを意識して、量を出しながら方向性を定めていきます。実際は出してからデータを基に改善していく形になると思うので、コアの体験の部分だけは外さず、それ以外の要素については作り込まないことを大事にしています。

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作り込まないことを意識しながら、とにかく早く具体化させる

インセプションデッキ

インセプションデッキは3つの目的のために開発プロジェクトのキックオフ時に毎回活用しています。
①理解度の水準を整えるための素材
②「どう作るか」のはじめの1歩
③プロセスを介したチームビルディング

それまでのプロセスの中では関わり方に応じて、持っている情報や考えてる視点が異なるので、開発がスタートするこのタイミングで頭の中を開放し、情報を集約させることにしています。これまで構築してきたWhyとWhatに対する理解度の水準を会話を通して揃えていき、「これまでのおさらい」+「これからどう作るかの指針」を決めていくための時間にしています。

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我々はなぜここにいるのかとやらないことリストは特に大事

OKR

プロジェクト毎に運用はアレンジされていますが、DX事業本部の開発チームではOKRを運用していることが多いです。大胆な目標を実現するためには、目標の可視化と継続的なチャレンジ、および継続的な学習サイクルの構築が必要不可欠だと思います。

そのうえでOKRは屋台骨となっており、プロダクトマネジメントの視点においても事業とプロダクトをつなぐ結節点だと捉えています。具体的な運用については過去のエントリをご参照ください。

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開発プロセス

開発は1週間スプリントで運用されていることが多いです。不動産売買のバリューチェーンはオフラインにも跨るため、あちらを立てればこちらが立たずな状態になりやすいです。例えば、ユーザーが簡単にCVできるformを作った結果、クライアントからもっと質の高いユーザーを紹介して欲しい、みたいなトレードオフが常に発生します。

トレードオフを両立させるためには繊細なコントロールが必要になるため、開発においてもアジリティを意識して短いスプリントで学習を積み重ねる事を大事にしています。

過去には角谷信太郎(@kakutani)さんにもご協力いただき、そのプロセスを洗練させていった歴史があります。

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また、「振り返りによる継続学習」というHowが組織単位で定着しているので、新規でプロジェクトを行う際や、別チームへのアサインになったときも、違和感なく合流できるようになっています。

朝会/1on1/もやっとコーナー

職種横断型のチームは視点や持っている情報が異なることが多いため、双方向のコミュニケーションを通して、自己組織化を図ります。成果を出すために、組織の練度を高めることは必須であり、これらの取り組みは仕組みとしてDX事業本部全体で習慣化しています。

PMとして、大事にしているポイントは3つで
① プロダクトを通して、実現するミッションを発信し続ける
② ①についてそれぞれの視点から、何ができるのかを考える機会を適切に設ける
③ その上で障壁となるものを顕在化できる環境をつくる

基本的にはそれぞれプロとして、職務を全うするというのが大前提ですが、自分を筆頭にそんなに完璧な人間はいないので、実態としては困ったときは助け合えるように言いたいこと言えるチームにしていきましょ、という感じです。

その中でも過去の経験から特に役に立ったのは、「もやっとコーナー」です。

もやっとコーナーはカンバンの一画に存在し、「期限がタイトでクオリティに妥協感がある」など、もやることがあれば、各自記載し翌日の朝会で解消する運用となっています。わざわざ手を止めて会話したり、Slackでやるとレスバトルになりそう、みたいなテーマを悪即斬の要領で解決していく仕組みです。

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今はZenHubに移行したので、ちょっとさみしい(写真は当時のもの)

まとめ

DX事業本部のPMとして、イエウールのプロダクト開発プロセスについて、ご紹介させていただきました。 実態としては、そこまで綺麗に区分されたものではなく、いったりきたりを繰り返しながら前に進むことがほとんどです。

DX領域において、持続的に顧客に価値提供するためには、取り組む課題と提供可能なソリューションを整合させ続ける必要があります。これを実現するためには「小さく早く学習を積み重ね、価値を磨き続ける」ことが重要です。我々の場合はそれらをWhy−What-Howの各フェーズごとに循環させながら、提供価値そのものを洗練させるスタイルでプロダクトマネジメントを行っています。

不動産領域のネットだけで完結しないが故に、全体のバリューチェーンを整合させる取り組みは、非常に難易度が高いですが、世の中にとって価値あるチャレンジだと思っています。SpeeeではDX領域における野心的な挑戦をしたい方を募集しています。興味がある方は以下よりご応募ください。

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