Speee DEVELOPER BLOG

Speee開発陣による技術情報発信ブログです。 メディア開発・運用、スマートフォンアプリ開発、Webマーケティング、アドテクなどで培った技術ノウハウを発信していきます!

SpeeeKaigiのつくりかた(とエンジニアの文化について)

この記事は Speee Advent Calendar 2017 12日目の記事です。
11日目は @kohtaro24 による CoffeeScriptをやめてES6を使うためにやったことまとめ でした。

プロダクト推進室の渡邊です。
少し前までエンジニア組織推進室という開発部をより良くすることをミッションにしているところで、エンジニア採用や組織推進などの企画、運営を行っていました。

Speeeでは半年に一度、社内技術プレゼン大会SpeeeKaigiというものを実施しています。
これまで3回実施してきて、色々形になってきたこともあるので、振り返りを記したいと思います。

前半は社内技術プレゼン大会を行う上での手順やポイントについてをまとめたHow to、後半はそのような取り組みを続けて感じた文化形成についてのポエムとなっています。社内で同様の取り組みをしたい方にとって参考になれば幸いです。

アジェンダ

  • SpeeeKaigiとは?
  • SpeeeKaigiのつくりかた
    • 思想編
    • 準備編
    • 当日編
    • その他Tips
  • SpeeeKaigiにみるエンジニアの文化について

SpeeeKaigiとは?

  • 半年に1回のペースで実施している社内の技術プレゼン大会です。
  • エンジニアに限った話では無いですが、「自分の成果を適切にアウトプットすること」(社内ではドヤると呼称しています)をとても重要視しており、どうせやるなら本気で場を用意しようとなったのがSpeeeKaigiになります。
  • 過去3回実施しており、直近の回ではエンジニア職以外の方もエントリするなど、エンジニアにとどまらず全社の技術自慢を行う公的な場所として位置づけられています。

tech.speee.jp

SpeeeKaigiのつくりかた

思想編

なぜ始めたのかを端的に。(過去レポートより引用)

Speeeでは様々な事業部にエンジニアが属しているため、他チームの業務の深い部分まで完全に理解することができないのが課題の一つです。Speeeではエンジニア全体mtgというものが週に一度あり、事業部持ち回りで毎週発表しているのですが、開発部の人も増える中で業務内外問わず、自身の技術をよりオープンに発信する文化にしたい・・ 暗黙知が増えることへの打ち手として、あーだこーだ言ってた中で、 「だったら社内で全員発表する機会を創れば良いのでは?」という方向になり、 どうせやるなら本気でやろう。と思い、審査員、賞品を用意して実施したのがSpeeeKaigiとなります。エンジニアによる技術のお祭りと位置づけてます。

第二回SpeeeKaigiを開催しました - Speee DEVELOPER BLOG

準備編

ToDoリストを公開します。

やるべきToDo

企画の作成

  • テーマや目的の整理。
  • SpeeeKaigiは「社内外問わず技術をもって課題を解決したこと」について話をしてもらっています。

企画詰め(開発部のマネージャー及び役員/顧問と意見交換)

  • 企画に対してのフィードバックをもらい、企画をFIXさせます。
  • Speeeの場合は開発部の方針と企画の趣旨のバランスを考慮し、評価項目やテーマなどを決めています。
  • 発表時間10分、質疑応答5分で基本的に全員が発表としています。
  • SpeeeKaigi「総合優勝」と「技術賞」「課題解決賞」「エンタメ賞」の3つの部門賞を用意しています。

現場に共有し、取り組み趣旨を理解してもらう

  • SpeeeKaigiは業務の一環で丸1日かけて実施するため、開発部として時間を確保する必要があります。
  • 2,3ヶ月ほど前に各事業部に共有し、取り組みの趣旨や内容を説明します。
  • 同時に各事業部の人にも技術理解の一環として、参加を呼びかけます。

審査員に協力を依頼

  • SpeeeKaigiは社内の馴れ合いにしたくないという思いがあり、本気でやることを重視しています。
  • その一環として、社外から審査員を招聘して実施しています。
  • 審査員の方、お忙しい中、いつもお時間割いていただき、ありがとうございます。

予算の確保

  • 本気でやる、という趣旨のもと、会社として予算をつけて実施しています。
  • 予算は賞品や当日の運営費(打ち上げなど)で活用しています。

賞品準備

  • PSVRやルンバなど、それっぽいものを用意するのですが、すでに持ってたり、興味が無かったりで外しがちです。準備している側としては悲しいですが、賞品がモチベーションにならないのはそれはそれで良いかと運営側では納得させています。
  • 「自分ではわざわざ買わないけど、もらえるなら欲しい」ぐらいがちょうど良いのではと思います。

テーマの発表

  • ちゃんと準備して臨んでもらいたいので、下記のようなスケジュールで参加者サイドには伝えています。
  • 2ヶ月前:開催日とテーマを共有
  • 1ヶ月前:賞品や当日のプログラムなど、具体的なアナウンス
  • 2週間前:発表テーマの回収

参加者を(愛をこめて)煽る

  • エンジニアに限らず、締め切りが迫らないと頑張れないのは人間の性。
  • 中途半端なものを出すのはかっこ悪いので、適宜煽ります(愛を込めましょう)

プログラムを展開し、全社的な認知を図る

  • SpeeeKaigiは全社の技術理解を副次的な目的としていますので、2週間前を目安にプログラムを全社に展開し観戦を募ります。

本番

  • 出入り自由とし、自事業部のエンジニアの応援や技術理解の一環として、自由に参加してもらいます。

当日編

楽しむ。Slackで実況チャンネルを作っておくと、とても楽しいです。

その他Tips

あると便利なもの

垂れ幕/バックボード

  • カンファレンス感がでます。

ドラ

  • カンファレンス感がでます。

眠気に負けない工夫

  • 発表者は前日まで発表準備を追い込むため、当日は眠気との戦いになりやすいです。
  • せっかくの機会なので、他の人の発表も聞いてほしいので、ここは工夫が必要です。
  • SpeeeKaigiではSpeeeBlendという魔法のコーヒーとハンドスピナーを配布しています。
  • ハンドスピナーは審査員も含めてみんな使っていたので、おすすめです。うるさくないものを選びましょう。
レイアウト

下記のような感じでやっています。

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SpeeeKaigiにみるエンジニアの文化について

ここからは過去3回の取り組みを通じて感じた、組織の文化形成についての話になります。SpeeeKaigiは開発部のアウトプットしていく文化を企業として後押しするために、業務として実施することを大切にしています。SpeeeKaigiを継続的に行うにあたり、開発部や全社の中で変化した価値観等について、触れたいと思います。

そもそも文化とは何か?

Wikipediaによると下記のようなものを文化と呼ぶようです。(参照:文化 - Wikipedia

  • ハイカルチャーのように洗練されたもの
  • 象徴的な思考や学習による信念やふるまいのパターン
  • ある社会組織に共有されている価値観

2番目のふるまいのパターンや、3番目の共有されている価値観という解釈が一般的に使われてるイメージに近いのかなと思います。個人的には、「組織が奨励する行動のうち、習慣化され、(良くも悪くも)残り続けたもの」が文化になると考えています。組織において、多くの挑戦的取り組みは継続されず、揮発してしまうと思っているのですが、うまく残していくと文化として継承され、組織の資産へと昇華していくその過程は蒸留に近いものを感じます。

SpeeeKaigiを通じて変わったこと

まだまだ文化と言えるほどではなく、ようやく文化の入り口に来たと言えるレベルのものですが、SpeeeKaigiやその他の取り組みを続ける中で、変化を感じたことを開発部と全社の視点から考えます。

開発部:アウトプットありきの文化

「自身の成果をアウトプットして、周囲に伝えること」が当たり前になってきたと感じます。SpeeeではSpeeeKaigi以外にもSpeeeLoungeでの勉強会など、社内外を問わず、発表の機会を設け自身のアウトプットを展開することが習慣化されました。別の言い方をすると、オフラインの勉強会やSpeeeKaigi、オンラインのTechブログ、Kibelaなど、アウトプットの機会を用意し、そこに組織として全力で乗る、ことを大事にしています。このあたりの変化については下記が詳しいです。

mogmog2.hatenablog.com

ただアウトプットするだけでなく、それを如何にして伝えるか、まで考えたアウトプットが増えた印象で、SpeeeKaigiのためのアウトプットを作るためのインプットなど、アウトプットありきの文化ができることでインプットへの意識も結果的に高まり、総じて良いサイクルがまわっていると感じます。個人的には社内外のアウトプットをどんどん増やして、個人としての市場価値をどんどんあげて欲しいと思っています。

全社:技術に浸る

このような開発部の取り組みを全社にオープンにしたことにより、全社として技術に浸る時間が長くなった気がします。SpeeeKaigiは社員の出入りを自由にしているため、技術の可能性を全社員が知ることが可能であり、結果的に多くの社員が技術のおもしろさに触れることにつながっています。業務とは異なる側面を知ることにより、「やっぱ技術理解大事だねー」「エンジニアの発表おもしろい」などのコメントを通じて、エンジニアの文化や価値観、技術へのリスプクトが正しい形で伝播していることを感じます。これは発表者がそれだけ本気で臨み、素晴らしい発表をし続けた結果なので、文化形成は関係するすべての人の行動の結果、とも言えると思います。

SpeeeKaigiは第1回、第2回は開発部を中心とした、身内のお祭りだったのですが、第3回はその枠組を広げ、エンジニア以外の職種の人からのエントリも可能としました。結果として、より多くの人がSpeeeKaigiを通じて技術とのふれあいを楽しむことになったと感じています。

文化形成に大切な3つのもの

最後にSpeeeKaigiを通じて感じた文化形成において、大切だと思うものを列挙し本エントリを締めたいと思います。

①主体者の熱意と根性

どんなものにも共通すると思うのですが、何かを形にする最初の過程は主体者の熱意と根性につきます。いったん有無を言わずやってやる、という強い気持ちが必要です。小さい想いを大きく育むための架け橋になるのが根性です。根気強く継続してやっていくことで次の②につながっていきます。

②本気で楽しみ、みんなでよくする

主体者の自己満足にならないよう、SpeeeKaigi終了後は毎回アンケートやヒアリングを通じて、色んな人の意見を聞き振り返りを行います。参加者、審査員、運営チーム、様々な視点があるので、それらを統合して次回にどう活かすかを決めています。ここに心理的な距離があると、主体者の孤立につながり、想いはあっという間に萎みます。主体者も含め、しらけさせないことが文化を育むためのポイントだと思います。SpeeeKaigiにおいても少しずつマンネリが顔を覗かせています。こことどう対峙するかは今後のポイントです。

③企業の理解(ある種の我慢)

このようなお祭りを継続的に行えるのは、企業として、この取り組みに理解と我慢ができたからだと思います。SpeeeKaigiは発表者の準備も大変ですし、業務時間内に実施する関係上、事業部、ひいては企業の理解が無いと実現できない取り組みとなっています。成果の見えにくいこの手の取り組みを継続して行うためには、取り組みがもたらす価値を日々のコミュニケーションを通じて、共通認識として持っておくことが重要だと思います。

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↑第3回SpeeeKaigiの集合写真です。こんな雰囲気でやってます。

まとめ

以上、SpeeeAdventCalendar12日目、SpeeeKaigiのつくりかた(とエンジニアの文化について)でした。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。エンジニア組織推進室では、今後もエンジニアの可能性に投資できる「攻めの取り組み」を継続的に行いたいと考えています。

SpeeeKaigi第4回は2018年冬春頃を予定しています。
次回はさらに枠組みを広げ、社外の方をもっとお招きできると良いなと妄想しています。

明日は@Tei1988による「KubernetesでFactorio」です。お楽しみに。