お疲れ様です!最近はどのIT企業にも1人はいる自作キーボードおじさんのSREエンジニア西田(@k_bigwheel)です。
先日自作キーボードに興味のある隣のチームのSくんと話していたところ、自作キーボードは思っていた以上に会社で使うメリットが多いことに気づきました!そこで今日はその自作キーボードのメリットについて書こうと思います。焦点は自作キーボードのソフトウェア(qmk_firmware)による柔軟性(論理配列)とそれが人と一緒に働く上でどのようなメリットがあるかです。
メリット1. 好きなキー配列(論理配列)で入力できる
パソコンを日頃よく使う人であればわかると思いますが、WindowsやMacのデフォルトのキー配列は実は結構非効率的です。例えばControlキーやShfitキーを押しながらZやYなどのキーを同時押しすることはよくありますがかなり手へ負担のかかる形で押さなければなりません。それは歴史的経緯によるものであったりキーボードがそもそも英語を入力する目的で設計されたものであることが原因です。
それに対して自作キーボードでは論理的なキーの配列をデフォルトから変更することがよく行われます。例えば親指付近のキーにAlt, Control, Shiftなどのキーを割り当てる、などです。こうすることにより親指でShiftなどを押しながら無理なくアルファベットキーを押すことができます。
メリット2. 人とPCを共有できる
上で説明したキー配列の変更だけであれば、AutoHotKeyやKarabinerのようなOS側のソフトウェアを使うことでおよそ実現することも不可能ではありません。 しかし会社でPCを使っていると自分のPCで一時的に同僚がキー入力することがよくあります。例えば名前や住所などをフォームなどへ入力してもらうときやペア・プログラミングのときなどです。このときにAutoHotKeyやKarabinerを使ってキー配列(論理配列)を変更しているととても困ったことになります。
自作キーボードなら問題ありません。自作キーボードのキー配列は自作キーボードのハードウェア側に保存されているため、そのキーボード以外からの入力には一切影響しないためです。他の人に入力してもらうときは別のキーボードから入力してもらうかノートPCなどであれば組み込みのキーボードを使ってもらえば混乱は起きません。
メリット3. 複数のPC/OSで同じキー配列が使える
職種によっては複数のPCを同時に使ったりすることがあります。そうでなくとも会社と自宅でそれぞれPCを使っている人は多いでしょう。また使うPCによってOSが異なることもよくあります(僕も会社ではMac, 自宅ではlinuxを使用しています)。 そういった場合でもなるべくキー配列は気に入っている同じものを使いたいものですが、AutoHotKeyやKarabinerのようなOS側のソフトウェアでキーの配列を変更しているとそれぞれのPCでそれらの設定を行う必要があります。しかもWindowsとMacでは使用するソフトウェアも違うため同じキー配列にしたくても設定はそれぞれ異なってくるでしょう。
それに対して自作キーボードの場合、設定がキーボード側で保存されるためOSに依存しません。一度設定を行えばどんなOS・PCに対しても同じ設定でキーを入力できます。例えば私はどんな環境でも以下のキー設定にしたいのですが(いわゆるvim矢印)
物理的なキー入力 | OS側での入力 |
---|---|
Ctrl-H | ← |
Ctrl-J | ↓ |
Ctrl-K | ↑ |
Ctrl-L | → |
この設定を一度入れることでその自作キーボードからならどんなPCでもどんなOSでもCtrl-Lで→を入力することができます。
またPCとMacで同じキーボードを使える点もメリットです。
実はPC(Windows)とMacではキーボードの仕様が微妙に異なります。
AltとWin(command)キーの配置が左右逆であったり、無変換・変換キーが英数・かなキーであったりする点です1。論理的なキー配列を切り替えられない通常のキーボードであればキー配置が逆であることや入力できないキーがあることを我慢したり前述のOS側のソフトウェアで工夫する必要があります。
しかし、自作キーボードであれば AG_SWAP
/ AG_NORM
という特殊なキーを使うことでAltとWin(Command)キーの配置を簡単に切り替えられたり、デフォルトレイヤーという機能を使うことで無変換 ⇔ 英数 キーなどほかも含めて複数のキーをWindows用 / Mac用で変更することができます。
ハードウェアの利点は?
ここまで読んでくださった中で勘の良い人は、実はここまで自作キーボードのソフトウェア面のメリットしか書いていないことに気づいたかもしれません。たしかに実際には自作キーボードにはハードウェア面のメリットもたくさんあります2。しかし、オフィスで働くときに最もメリットがあるのは自作キーボードのソフトウェア的な柔軟性とそのキー設定がOS側ではなくキーボード側に保存されるという点だと僕は思っています。
そして、自作キーボードと同じソフトウェア(ファームウェア)を使える組み立て済みの製品は実は結構あります。 ということは面倒なはんだ付けや組み立てをしなくてもこれらのメリットを受けられるのです!
おすすめ組み立て済みキーボード
ということで、ここからははんだ付けや組み立てには自身がないけどキー配列やマクロ機能はカスタマイズしたいという人のためにqmk firmware(ほとんどの自作キーボードで採用されている、キー配列やマクロ機能を実現するソフトウェア)へ対応した組み立て済みキーボードを紹介します。
drop.com
drop.comは自作キーボード黎明期から自作キーボード用のパーツを販売していた老舗サイトです。 数年前から「Drop XXX Mechanical Keyboard」という組み立て済みキーボードを販売しています。 これが組み立て済みかつ物理的なキー配列が一般的なキーボードと一緒であるため特に初心者へおすすめです(ただし僕自身はここで部品を購入したことはあっても組み立て済みキーボードを購入したことはないため念の為詳細には目を通して購入してください)。
drop.comのポリシーにより製品詳細はログインしないと見れません。
サイトはかなり見づらいですが、キーボードカテゴリの中でも末尾が Keyboard で終わっており Kit や Barebones という文字列を含んでいない製品名が組み立て済みのものです。かつ製品のSpecに「QMK firmware」と書かれていればこの記事で説明したようなソフトウェア面でのフルカスタマイズが可能です。
特に以下の3製品はdrop.comの看板製品で売上・評価ともに安定しておりおすすめです。 在庫も比較的安定しています。
- Drop CTRL Mechanical Keyboard | Price & Reviews | Drop $160
- Drop ALT Mechanical Keyboard | Price & Reviews | Drop $144
- Drop SHIFT Mechanical Keyboard | Price & Reviews | Drop $230
一方名前はよく似ていますが以下の製品はqmk firmwareに対応しておらずソフトウェア面でのカスタマイズができないようですので注意してください!
drop.comの組み立て済みキーボードは本当にコストパフォーマンスが良いです。通常自作キーボードの場合、完成にかかるコストはほとんどが合計2万円以上になるんですがdrop.comだと組み立て済みにもかかわらず送料含めても2万円以下に収まります。あまり安いんで購入を自重するのが大変ですw
Ergodox Ez / Moonlander
ZSA Tehnology Labsさんもおすすめです。 ここも数年前からErgodoxというオープンソースキーボードの組み立て済み品を販売しているところです。4年前、カスタマイズ可能な分割型キーボードがほしいけどハンダや組み立てには自信がないと思っていた僕はここで買いました。それ以来4年間ほぼ毎日Ergodox Ezを使っています。同じようにここで完成品を買ったのち、次のステップで自作に挑戦した人はたくさんいました。
先述のDropさんの製品と比べると少しお高めですが、Ergodox Ezは僕も会社と自宅用で2つ持っているほど気に入っています!ただ、キーの物理的な配列が通常のキーボードと違い左右で別れていますのでそこに慣れるのは結構大変かもしれません。
まとめ
ということでオフィスでの自作キーボードの利点と初心者向け組み立て済みカスタマイズ可能キーボードを紹介しました。 これを機に自作キーボードとキー配列のカスタマイズへ興味を持ってくれた人が1人でもいてくれると幸いです!
この記事はbat43によって書かれました。
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このためwindows用・mac用でキーボードが別れている製品もあります - 例: Happy Hacking Keyboard|PFUダイレクト↩
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物理配列、選べるキースイッチ、キーキャップ、分割型などなど…↩