こんにちは! ものづくり組織推進室の りゅっくです。 職種としてはエンジニアではなく、ものづくり組織を推進する立場として、採用や組織面の運営などに携わっています。今回はそんな中から、最近行った「ソフトウェアの資産計上」について、プロダクト開発、ひいては事業開発にどんな影響があるのか、お話したいと思います。
これは、Speee Advent Calendar 2018の12月11日の記事です。
この記事でお話することと、その背景
最終的には、「ソフトウェアを資産計上する、ということが事業にどのように影響するのか」ということをお伝えするのが、この記事の目的です。大学では経済学部にいて、経営学や会計学も履修したので、その時の記憶を引き出しながら書いています。加えて、エンジニアに向けて、背景を伝えるための記事になっていますので、ツッコミどころなどは多々あると思いますが、重大な誤りがなければ目をつむっていただければと思います。🙏
構成としては、下記の形で話を進めます。
- 「ソフトウェアを資産計上する、とはどういうことなのか」
- 「ソフトウェアを資産計上する、ということが事業にどのように影響するのか」
「ソフトウェアを資産計上する、とはどういうことなのか」
こういう抽象的な話をするときは単語の定義が大事ですね。 面倒ですがそこから始めたいと思います。
ソフトウェアとはなにか
Wikipediaより、
ソフトウェア(英: software)は、コンピューター分野でハードウェア(物理的な機械)と対比される用語で、何らかの処理を行うコンピュータ・プログラムや、更には関連する文書などを指す[1]。
このQiitaもソフトウェアですし、このQiitaを見るのに使われるブラウザもソフトウェアですし、と、この辺の話は釈迦に説法みたいになるので、省略します。 この記事が扱う会計の文脈で特に極端な定義があるかと言うと、そんなことはないので、みなさんの認識そのままできっと大丈夫です。イメージがずれるとすれば、関連する文書も含めるといったところでしょうか。細かく知りたい人は日本公認会計士協会が出してる実務指針などを参考にしてみてください。
また、この記事では、ソフトウェアは自社開発しているとして話を進めます。
資産計上とはなにか
「資産」という単語が会計学用語ですね。 こちらもWikipediaから引用させてもらいます。
資産(しさん、英: asset)とは、会計学用語であり[1]、財務会計および簿記における勘定科目の区分の一つ。会社に帰属し、貨幣を尺度とする評価が可能で、かつ将来的に会社に収益をもたらすことが期待される経済的価値のことをいう。
おそらく一番わかりやすい例としては、現金がこれに当てはまります。他にも土地や建物とかがわかりやすいかもしれません。
上記の引用をもとに「ソフトウェアを資産計上する。」という文をより明確にすると、「ソフトウェアという「将来的に会社に収益をもたらすことが期待される経済的価値」に対して、「貨幣を尺度とする評価」を行うことで、「資産」として計上する。」となります。
と、言うわけで前提の話はここまで。👐
「ソフトウェアを資産計上する、ということが事業にどのように影響するのか」
結論だけ先に書いてしまうと、きちんとソフトウェアを資産として計上することで、「事業として長期的な投資ができるようになる」というのが、一番のメリットだと思います。「え、なんで?😳」というのをこれから説明します。
そもそもソフトウェアを資産計上しないという状態について
今回の記事では、ソフトウェアは自社開発しているとして話を進めています。となると、ソフトウェアを開発するためにかかる費用は、主に人件費ですね。
人件費はその名の通り、費用として計上されます。そのため、あるソフトウェアを作成するために、
- 年収1,000万円のエンジニアが3人
- 期間は1年間
かかったとすると、その年は3,000万円の費用を支払った、として計上されるわけです。これが、ソフトウェアを資産として計上しなかった場合です。
では、ソフトウェアを資産計上するとどうなるのか
上記と同じ設定で考えたときに、そのソフトウェアが、「将来的に会社に収益をもたらすことが期待される」のであれば、「貨幣を尺度とする評価」を行うことで、「資産」として計上する。というのが、ソフトウェアを資産計上するということでした。つまりどういうことかというと、
- 「将来的に会社に収益をもたらすことが期待される」という前提のもと、
- 「貨幣を尺度とする評価」= 3,000万円(今回の例では人件費の額)で、
- ソフトウェアを「資産」として計上する。
すなわち、その年は3,000万円のソフトウェアを資産として購入した、と計上されるのです。
なるほど…?😳
結局違いはなんなんだ
- 3,000万円の費用を支払った。
- 3,000万円のソフトウェアを資産として購入した。
結局この違いは何なのでしょうか。費用と資産の間にどんな違いがあるのでしょうか。その違いは、資産として計上すると、減価償却という考え方が適用できる、という点にあります。
減価償却とは
こちらもWikipediaから。
減価償却(げんかしょうきゃく、英: Depreciation)とは、企業会計に関する購入費用の認識と計算の方法のひとつである。長期間にわたって使用される固定資産の取得(設備投資)に要した支出を、その資産が使用できる期間にわたって費用配分する手続きである。
つまり、費用をその資産を使う期間に応じて計上できる、ということです。 上記の例のソフトウェアを5年使用する。と仮定すると、会計上の費用の計上は、
ケース | 1年目の費用 | 2年目の費用 | 3年目の費用 | 4年目の費用 | 5年目の費用 |
---|---|---|---|---|---|
資産計上しない場合 | 3,000万円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 |
資産計上する場合 | 600万円 | 600万円 | 600万円 | 600万円 | 600万円 |
となります。(本当はもっといろいろ制約とかがあるんですが、簡単のため。) これは、長期的に使用するソフトウェアの開発のためにかかる費用を、事業運営や経営などの意思決定に使用される、P/L(貸借対照表)などの会計上の扱いとしては、(誤解を恐れずに言えば)一括払いではなく、分割払いとして扱うことができるようになるということです。すなわち、事業の意思決定として、長期的な投資ができるようになるということです。これから利益を生むソフトウェアに対して、一括で3,000万円払うより、毎年600万円を5年間払うほうが、現実的ですよね。
と、いうのが「ソフトウェアを資産計上する、ということが事業にどのように影響するのか」のお話でした👐
※注意というか勘違いしないでほしいこと
- 減価償却というのは、あくまで会計上の話です。決して「あなたが作るソフトウェアは資産計上するので、給料は分割して払うね」みたいなディストピアな世界の話ではありません。
- 何でもかんでも資産計上していいわけではありません。あくまでも「将来的に会社に収益をもたらすことが期待される」という前提のもとに成り立つ話です。この前提を満たさないと、各所に怒られるし、何なら全然捕まります。👮 会計は企業の実態を数字で適切に表すためのものという前提から逸脱してはいけません。
改めて、まとめ
- ソフトウェアを資産計上するということは、「ソフトウェアという、「将来的に会社に収益をもたらすことが期待される経済的価値」に対して、「貨幣を尺度とする評価」を行うことで、「資産」として計上する。」ことである。
- ソフトウェアを適切に資産として計上することで、減価償却という考え方を適用できるようになり、事業としては長期的な投資の意思決定ができるようになる。
以上、「ソフトウェアの資産計上について」の記事でした! 明日の12月12日は、bino98です。よろしくお願いします!
参考文献
- 研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針 (2018-12-11 16:20 JST)
- ソフトウェア - Wikipedia (2018/12/11 14:42 JST)
- 資産 - Wikipedia (2018/12/11 14:46 JST)
- 減価償却 - Wikipedia (2018/12/11 23:49 JST)