プロローグ:ガバナンスから実践へ
こんにちは、Speeeでビジネス領域のAIガバナンスプロジェクトのオーナーをしております 長山と申します。普段はバントナー事業部で、クライアント企業のDXに伴走支援しております。
以前「AIを組織の競争力に変える、SpeeeのAIガバナンスデザイン」という記事で、安全かつ効果的なAI活用を促進するためのガバナンス体制の構築について紹介しました。
我々は長い時間をかけ、AIガバナンス委員会の設置、利用申請フローの整備、ガイドラインの策定など、生成AIを組織的に活用するための「土台」を築いてきました。その次の課題は「現場での活用促進・浸透」です。どれだけ優れた制度やルールを整備しても、日々の業務の中でAIが効果的に活用されなければ、真の組織力向上にはつながりません。
そこで私たちは、ガバナンスの「次のステップ」として、現場のAI活用を促進するための新たな取り組みを始めました。それは、AIを積極的に活用している社員にインタビューを行い、その具体的な活用法や学びを社内wikiで連載記事として発信する、というものです。記事の執筆はAIが行うため、インタビューの時間以外はほとんど工数をかけずに、価値あるナレッジを効率的に共有できています。
これらの取り組みを通じて、個々の社員のAI活用の工夫を、『組織全体のナレッジ』として共有し、ボトムアップでのAI活用文化を醸成することを目指しています。

具体的な記事(社内wiki)のコンテンツは情報の特性上お伝えすることができかねますが、本記事では、その連載から特に示唆に富むインタビュー内容を抜粋・再構成し、見えてきたAI活用の実態と学びを共有したいと思います。 営業、マーケティング、コンサルタント、デザイン、バックオフィスなど、多様な職種の声に耳を傾けることで、組織全体にAIを浸透させるためのヒントが見えてくるはずです。 AIガバナンスという「制度」の先にある「組織文化」と「人間の心理」にフォーカスすることで、多くの企業が直面するであろうAI時代の組織変革の課題に、新たな視点を提供できればと思います。
現場から生まれる多様なAI活用パターン
新たな世代の働き方:直感的なAI活用
インタビューを通じて最も印象的だったのは、若手社員の躊躇のないAI活用姿勢でした。社内のAIツール利用状況を分析したところ、最も活発にAIを活用している社員の一人は、入社1年目の新卒社員でした。一日平均50ラリー近くAIと対話するこの社員は、多くのベテラン社員の利用頻度を大きく上回っています。
ずっと開いていて、何か疑問があるたびに、すぐに利用しています。
そう語るのは、ある事業部で活躍する入社1年目の社員です。オペレーション業務の改善を担当する彼女は、日々の業務のあらゆる場面でAIを活用しています。スライドのための画像生成、動画の台本作成、さらには業務効率化のための各種分析まで、思いつく限りの業務をAIに相談しながら進めているのです。
特筆すべきは、彼女がプログラミングなどの技術的バックグラウンドを持たないにもかかわらず、AIを自分の「頼れる相談相手」として位置づけ、躊躇なく活用している点です。
例えば、業務効率化のためのプロジェクトでは、AIを活用して分析を行った結果、対応時間を大幅に短縮。さらに興味深いことに、相互のコミュニケーションがスムーズになり、全体的な業務フローが改善されたといいます。
ツールの使い分けによる複合的活用
現場でのAI活用が進む中で、目的に応じたツールの使い分けも進んでいます。広報として活躍する社員は、複数のAIツールを組み合わせて効率的な情報収集・分析を実現しています。
主にGeminiを使っています。以前はChatGPTをよく使っていましたが、社内ルールが整備されたタイミングでGeminiを使うようになりました。特にGeminiはスプレッドシートとの連携や、Googleドキュメントとの連携が優れていて便利です。
複数のAIツールを使い分けることで、それぞれのツールの強みを活かした業務効率化が実現しています。単一のAIツールに縛られず、常に最新のソリューションを組み合わせて価値を最大化できるのは、前述した柔軟なガバナンス体制があってこそです。例えば、広範囲の情報収集にはGeminiのDeep Research、最新情報の確認にはPerplexity、複数資料の構造的理解にはNotebookLMといった具合に、最適なツールを使い分けています。
コンテンツ制作プロセスの変革
採用マーケティングの現場でも、コンテンツ制作プロセスにAIを組み込むことで、効率化と品質向上を同時に実現しています。ある採用マーケティング担当者は、コンテンツ制作の各段階でAIを活用する工夫を共有してくれました。
企画、制作、編集とステップごとに違った使い方をしています。例えば企画段階ではアイデア出しやターゲット分析、制作段階では記事作成や動画編集のポイント抽出、そして編集段階では素材生成などにAIを活用しています。特に時間のかかる書き起こしからの記事作成や、長尺動画からのハイライト抽出がすごく効率化されました。
特に興味深いのは、AIを「全てを任せるツール」ではなく「協働するパートナー」として位置づけている点です。例えば、動画制作においては、AIに書き起こしデータを分析させ、視聴者の興味を引きそうなハイライトポイントを抽出。それをもとに人間が最終的な編集判断を行うというプロセスが確立されています。
AIが提案する編集ポイントは的確です。私の体感としても『ここが抜き出せそうだな』と思うポイントとほぼ合致していました。AIに10個くらい候補を出してもらうと、その中から実際に使えるものを選べますね。
ボトムアップのうねりを支える全体戦略
ここまで紹介してきた多様なAI活用事例は、決して偶然や個人の努力のみによって生まれたものではありません。これら現場のボトムアップのうねりは、AIガバナンスという「土台」の上でこそ成り立っています。
以前の記事で詳述した通り、私たちのAIガバナンスは、単なる「守り」のための規制ではなく、「攻め」の活用を加速させるためのものです。その設計思想の根幹には、以下の考え方があります。
「どこまで守れば攻められるのか」を基準に、最低限必要な「守り」を固めた上で、最大限の「攻め」を可能にする。この発想が私たちの設計思想になります。 (出典:AIを組織の競争力に変える、SpeeeのAIガバナンスデザイン)
つまり、現場の社員が安心して、かつ大胆にAIという新たな武器を試すことができる「安全な実験場」を組織として提供すること。これこそが、全体戦略としてのAIガバナンスの狙いです。現場で生まれる無数の「実践」と、それを支える「ガバナンス」が両輪となって初めて、組織全体のAI活用レベルは向上していくのです。
次章では、この考え方に基づき、現場の創意工夫をさらに組織全体へと広げ、文化として根付かせていくための具体的な戦略について掘り下げていきます。
AI活用を組織全体に浸透させるための戦略
インタビューから得られた知見をもとに、組織全体へのAI浸透を促進するための五つの戦略が見えてきました。
【1】「実験する組織」への転換
第一の戦略は、「正解を学ぶ」から「仮説を検証する」組織文化への転換です。AI技術の進化は非常に速く、「正しいAI活用法」は常に更新され続けています。このような環境では、完璧な計画を立てるよりも、小さな実験を繰り返し、素早く学習していくアプローチが効果的です。
この「実験と学習」のサイクルを組織に根付かせる上で、世代間の知識共有が鍵となります。経験豊富なベテラン社員が持つ業務知識と、若手社員が持つ最新のAIツールへの感性を組み合わせることで、新たな活用法が生まれるのです。あるマーケティング担当者は、その具体的な姿を次のように語ります。
現場の知識はあるもののAIの最新動向を追い切れていない上司と、AIに詳しい若手が協力して仕事を進めていくイメージです。『AIでこんなことができましたよ』『こんなAIが出ましたよ』という知見をチーム内で展開し続ける役割は若手でも担いやすい。
このように、若手がAI活用の「伝道師」となり、ベテランがその活用法を業務に即して洗練させていく。こうした世代を超えた「実験と学習」の好循環こそが、組織全体のAI活用レベルを引き上げるのです。
小さな成功体験の積み重ねが、AI活用への抵抗感を減らし、前向きな挑戦を促します。インタビューでは、「最初は半信半疑だったが、一度使ってみて効果を実感した」という声が多く聞かれました。特に重要なのは、失敗を恐れず、むしろ学びの機会として捉える文化の醸成です。
AIは使いこなす人の手腕によって、その効果が大きく変わります。「AIが仕事を奪うのではなく、AIを使う人間が仕事を奪う」という言葉は、インタビューの中でも話題に上りました。これからのビジネスパーソンに求められる姿勢を端的に表しています。実験的な姿勢でAIと向き合い、試行錯誤を繰り返すことが、結果的に大きな成果につながるのです。
【2】「問いのデザイン」を核心能力に
第二の戦略は、「知識の量」から「問いの質」へと専門性の再定義を行うことです。AIが「答え」を提供する時代において、人間の価値は「正しい問い」を立てる能力にシフトしていきます。
重要なのは『プロンプト』よりも『コミュニケーション』だと感じています。AIに対して完璧な質問をする必要はなく、エラーが出たら投げる、分からないことがあれば聞く、というやり取りを繰り返していれば、プログラミングの知識がなくても自然とできるようになると思います。
あるバックオフィスの担当者はこう語ります。AIとの対話を通じて問いを洗練させていく過程そのものが、価値を生み出すのです。
自分で一から書き起こすと膨大な時間がかかりますが、AIに一旦書いてもらうことで大幅に時間短縮できます。ある程度のレベルまで来たら、あとは細かい修正だけで済みますから。
採用マーケティング担当者のこの言葉は、「完璧な問い」を最初から用意するのではなく、対話的に問いを発展させていくアプローチの有効性を示しています。
【3】「管理」から「共創」へのシフト
第三の戦略は、中央管理的な「AI戦略」からボトムアップの「AI実践」へと重点をシフトすることです。インタビューを通じて明らかになったのは、最も効果的なAI活用事例の多くが、現場の創意工夫から生まれているという事実でした。
中央集権的に私がAI担当ですって言って作って配る形ではなく、現場の人たちがプロンプトやフローを組み立てて自分たちで運用・改善していく、そういう文化・環境でないと、AIは浸透していかないんじゃないかと思います。
あるマーケティング担当者のこの言葉は、「緩やかなガイドライン」と「自律的な実践」のバランスの重要性を示しています。
組織全体にAIを浸透させるためには、「管理」よりも、現場の創意工夫を促進し、それを横展開する「共創」のアプローチが効果的です。具体的には、部門特性に合わせた「AIガイドラインのローカライズ」や、部門を超えた「AI活用コミュニティ」の形成などが考えられます。
特に重要なのは、現場の声に耳を傾け、ボトムアップの創意工夫を組織的に支援する姿勢です。例えば、「AI活用アイデアコンテスト」の開催や、優れた活用事例に対する表彰制度の導入など、現場の工夫を称え、広げる仕組みが効果を発揮するでしょう。
参考 : AIものづくりコンテスト『S-1グランプリ』で見えたAI民主化の未来
【4】「技術と業務の越境」を促す人材の育成
第四の戦略は、AI技術と業務知識の境界を越えて活躍する「越境人材」の育成です。インタビューを通じて、AIが職種間の壁を溶かし、新たな協業の形を生み出している様子が明らかになりました。特に、これまで明確に分かれていた「企画(プランナー)」と「開発(エンジニア)」の役割が、AIを介して重なり合い始めています。
あるプロダクトマネージャーは、AI駆動開発によってプランナー自身がコードを書き、実装まで行う取り組みを始めています。
今思っているのは、イシューを書いた人がそのまま開発できる状態が理想的だということです。
これは、従来の「橋渡し」という概念をさらに一歩進めたものです。AIのサポートによって技術的なハードルが下がったことで、企画者がアイデアを直接形にできるようになり、開発サイクルが劇的に高速化する可能性が生まれています。
もちろん、これは職種の境界を完全になくすという意味ではありません。むしろ、それぞれの専門性を核としながら、互いの領域に染み出していく「役割の重なり合い」が重要だと、彼は語ります。
完全に境界を排除するということではなく、重なり合いだと思っています。(中略)プランナーはエンジニア領域に染み出していき、逆にエンジニアも企画領域に染み出していく。みんなのパフォーマンスが向上することで、従来よりも良いものを早く作れるようになることが理想です。
このような「越境」は、ビジネスサイドの強みのあり方も変えていきます。これまでエンジニアの力を借りなければ検証できなかったアイデアも、プランナーが自らプロトタイプを作成し、効果を検証できるようになるのです。
プランナーが簡単なプロトタイプを自分で作って検証し、『これは成果が出ることを確認済みです』という状態でエンジニアに本格実装を依頼できるようになります。
AI時代において求められるのは、単に技術を理解するだけでなく、積極的に境界を越え、自身の専門性を拡張していく姿勢です。そして、その過程で最も重要になるのは、「まだ言葉にされていない本質的な課題」を発見し、言語化する能力なのかもしれません。
【5】「定量的効果測定」への挑戦
第五の戦略は、AI活用の効果を定量的に測定し、可視化する取り組みです。インタビューを通じて、「AIを使うことで何が変わったのか」を具体的に示すことの重要性が指摘されました。
メール作成時間が約3分の1に短縮されたのが一番の効果です。迅速な返信が求められる職種柄、この時間短縮は非常に大きいですね。また、どうしても会議などで返信が遅れがちになる場合でも、Geminiがあれば短時間で適切な返信ができます。
あるディレクターは、Gmail Geminiの活用効果をこのように語ります。具体的な時間短縮効果を示すことで、AI活用のメリットが明確になります。
未来を引きよせるために
これまで見てきた5つの戦略
- 実験する組織への転換
- 問いのデザイン
- 共創へのシフト
- 技術と業務の越境
- 定量的効果測定
は、個別のインタビューから見えてきた現場の知恵の結晶です。
そして、多様な現場の声に耳を傾け、その中から共通項を見出し、組織の戦略へと昇華させていくプロセス自体が、AI時代における組織学習の重要なアプローチと言えるでしょう。
しかし、これらは単なる個別の戦術の集合体ではありません。
これらボトムアップの実践知の最大公約数として浮かび上がってくるのは、私たちの全体戦略、すなわち「『どこまで守れば攻められるのか』を基準に、最低限必要な『守り』を固めた上で、最大限の『攻め』を可能にする」という思想そのものです。
中央管理的に用意された「安全な実験場」という土台の上で、現場が自律的に実験を繰り返し、問いを磨き、共創する。その結果として見えてきた具体的なアクションが、この5つの戦略でした。全体戦略とボトムアップの個別戦略が互いに連携し、SpeeeのAI活用を力強く推進していると言えます。
インタビューから見えてきたのは、AIの進化が逆説的に「人間らしさ」の価値を浮き彫りにしているという事実でもあります。AIが定型的な業務を効率化すればするほど、人間にしかできない「共感」「創造性」「判断」といった価値が高まっていきます。

結局のところ、テクノロジーを使いこなし、新たな価値を生み出すのは人間の創意工夫に他なりません。この「人間の創意工夫」こそが、私たちのミッションである「解き尽くす。未来を引きよせる。」を実現するための原動力です。 多様な事業を展開するSpeeeにとって、AIは個々の業務効率化ツールにとどまらず、事業間のシナジーを創出し、複雑な社会課題を「解き尽くす」ための核心技術と位置づけています。 AIガバナンスという「制度」の整備から始まった私たちの挑戦は、現場での「実践」を通じて、今まさに組織の「文化」へと進化を遂げようとしています。未来を引きよせるこの旅に、共に挑んでくれる仲間を私たちは待っています。
※本記事はAIで執筆されました