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NSMやOKRを通じて本当に価値のあることにフォーカスするロードマップを作成した話

NSMやOKRを通じて本当に価値のあることにフォーカスするロードマップを作成した話

デジタルトランスフォーメーション(DX)事業本部でHousii(ハウシー)という事業で開発PMをしています、塚本 (@nao_tsukamoto) です。

期の始まりとなることも多いこの季節に、開発PMとしてはプロダクト開発ロードマップをアップデートしたり、新たに定義し直したりしている方も多いのではないかと思います。


私もその多分にもれず、2月後半から3月にかけてプロダクト開発ロードマップについて見直して作成し直す機会がありました。その際に思わずトラップにハマりそうになったので、トラップを避けつつロードマップ作成時に取り組み、学んだことを紹介したいと思います。

はじめに

プロダクト開発ロードマップの作成においては、多くの記事や示唆が既に共有されていますので、この記事では「ロードマップって何?」や「なぜロードマップを作ったのか?」については割愛させてください。


この記事では以下のことを書いています。

  • プロダクト開発ロードマップの作成において、施策の積み上げと優先度付けでロードマップらしきものはできるが、本当にHousiiが目指すべき方向として正しいか、が不明瞭かつ迷いがでた
  • NSM(ノーススターメトリック)の導入とOKRの見直しのプロセスを通して、僕らのコアは「マッチングの体験を最大限向上させること」だと改めて気づけた
  • これらを通してプロダクト開発ロードマップを再考し、プロダクト価値を最大化するものを作成できた

では、私たちのチームが上記のような状況からどんなプロセスを踏んでロードマップ改定に至ったか、を説明していきます。


特に、

  • プロダクト開発ロードマップを提供されていてこれでいくぞと言われているマーケや営業、企画職の方
  • 自身でロードマップを作成してみたが、施策の積み上げになってしまっていると課題感をうっすらでも持っている方

を想定読者としていて、その方々に、少しでも自身のロードマップ自体やプロダクト開発の方向性に対している違和感を言語化でき、更に関わっているプロダクトの今後がよりよくなっていけるような示唆を与えられれば幸いです。

私の関わっているサービスに関して

少しだけサービスの説明と紹介をさせてください。


完全会員制の家探しサービス「Housii(ハウシー)」のプレスリリースを出しました。 こちらは、BtoBtoCのサービスです。

prtimes.jp


また、先行してベータ版を出しておりましたので、今回プロダクト提供開始記念インフォグラフィックも公開しました。

prtimes.jp

ハマりかけた施策の積み上げによるロードマップらしきもの

実は、施策の積み上げと優先度付けでロードマップらしきものはできていました。 しかし、半年後には”なんでもできる”プロダクトのロードマップができていました。 それは私たちがまだ立ち上げ期に目指すものではないのでは、という迷いがありました。


具体的には、私たちは以下のような状況にありました。


1. よりアグレッシブな事業目標(売上 / 利益)があった

  • その中でプロダクトチームが期待されていることも感じていた
  • よって、これはできないか?あれもできないか?と来る状態だった

2. 半年後我々はなにを成し遂げたと言えるか?の問いに対して少し躊躇していた

  • あれもこれも成し遂げているというリリース間もないのになんでもできるプロダクトになっていた
  • つまり、なににも尖っていない、「なんでもできるは、なんにもできない」


当時は、すでに半年前くらいに作成したロードマップはあって少し粗めではあるものの当時から目指すべき状態も定義していました。 しかし、リリースして約8ヶ月、日に日にプロダクトは大きくなり、やりたいことや改善したい部分が湧いている状態でした。


このような状況から、プロダクト価値の最大化を目指すのではなく、どこか無意識的に”なんでもそこそこできるプロダクト”を積み上げで作っていこうぜ! という施策を積んでいました。


そしてそれは、事業戦略と照らし合わせると整合していないことが感覚的にはわかっていました。


よく言われていることではありますが、サービスが拡大期に入ると、現状のプロダクトから改善したいところやこんなものがあると良さそうとなりやすいです。 加えて、サービスを拡大していこうとすると、直接的に売上に寄与するものや、顧客が要望しているもの、拡大時の運用を楽にできるもの、に安易に流されやすいのもあります。


まさに私たちは施策の積み上げによるロードマップの作成というトラップにハマっていました。

「マッチングの体験を最大限向上させること」がコアだと改めて気づくためにやったこと

私たちは、”なんでもそこそこできるプロダクトからの脱却” が必要でした。


Objectiveの状態を計測可能かつプロダクト価値を表すものにしたのがNSMです。 Key ResultsはObjectiveを分解したものですが、あくまでObjectiveの主要部分を分解し計測可能なものにしたものなので、Objectiveによって定義した状態ができていることを素直に表せないはずです。


このような背景から、当時定義していたObjectiveの状態を計測してよりアウトカムに繋がる開発できないかと考えました。


そこで、NSM(ノーススターメトリック)を策定・導入し、改めてOKRをも策定するプロセスを通じて解決することにしました。


NSMの位置付けや定義については以下を参考にください。

jp.amplitude.com


以下の小城さんの記事でもOKRとNSMの関係性が触れられています。

note.com


以下では、その過程を具体的に見ていきます。 もしPMの方や企画の方であれば、この仮説立てと分析からしてほしいと思います。


まず、私はNSMの候補となりそうな指標の候補を3つほど出しました。 実際の指標から少々ぼかしますが、以下のような指標です。


  • 物件の購入希望者の方が、Housiiに登録してからxx日以内にoo件の提案をもらえる
  • 物件の購入希望者の方が、合計でn社の不動産会社様と関わりが持てている
  • 物件の購入希望者の方が、合計でyy件の物件の提案がもらえている


NSMの候補を出す上では、「広がり」「深さ」「頻度」「効率」の4軸で考えていきました。


上記で躓く方は、「自分たちのサービスやプロダクトを満足して使ってくれた方はその途中でどういう状態になっているか?」という問いを投げてみるのがよいかもしれません。


その後、上記で定めた理想状態に至った顧客とその理想状態に至らなかった顧客をセグメント分けして、上記の指標を満たしているかどうかの数値を入力していき、◯ or ×をつけていきました。


この段階では、当初候補に出した指標の数値を顧客ごとに簡単に抽出できなかったので、目視でデータを見ていきました。 正直、ここは泥臭い作業で心が折れかけました。(笑)


しかし、この地道な作業のおかげで、顧客が私たちのサービスを利用して満足しているかどうか、をよりイメージできた気がします。 (※ここでいうデータは定量データのみならず、定性的なデータも含みます。)


NSMの仮説指標の調査の実際の分析シート
NSMの仮説指標の調査の実際の分析シート


分析した結果、3つの候補の掛け合わせで1つの指標に着地しました。 また、顧客セグメントをある程度きれいに分けることもできました。


そしてその指標は、Housiiにおいて顧客と企業がマッチングするときの精度と早さ、量を表すものとなり、改めて私たちは、「Housiiでのマッチングの体験を最大限向上させること」がコアだと改めて気づきました。


そして、結果的には、OKRもアップデートするに至りました。

それ自体に価値はあるがコアではない施策や機能が削ぎ落とされた

今回のプロセスを通して、いかに自分たちが色々なことをやりたい、と思っていたかがわかりました。 数ヶ月前の私たちは、無意識のうちに、「なんでもできるは、なんにもできない」というあるあるのトラップに向かおうとしていました。


現在はプロダクト価値のコアに気づけたことで、コアの価値に寄与しない施策を容易にやらない判断ができるようになり、私たちのプロダクト開発ロードマップは、OKRの実現・NSMの達成のために必要最低限な機能のみが記載されるものができあがりました。


そして、チームもマッチング体験の向上を実現することにフォーカスできるようになりました。

最後に

プロダクト開発ロードマップの作成は施策の積み上げによって、あたかもできた気になってしまいます。 自分もそうなりかけていました。普段業務でロードマップを作成したり、眺めている方々には、これらの施策や機能はどこに向かっているのか?何の実現することに繋がっているのか?を考えてみてください。


もしこの記事を見ている方がPMや企画の方であれば、NSMは作る作らないに関わらず、「プロダクト価値を表す指標」を置くとすれば何を置くと良いか?という問いと仮説出しから始めてみて下さい。 仮説がでれば分析に進め、その仮説を正しさを見ることができます。


その過程を通じて自分たちが目指す指針が見えたとき、その道筋となるロードマップを正しく評価し改善していけるはずです。 私自身もまだまだ道半ばであり、またプロダクトもこれからなので、自分たちで決めた指針に向かって邁進していきたいと思います。


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