※この記事は、2024 Speee Advent Calendar 19 日目の記事です。
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はじめに
こんにちは、不動産 DX 事業部でエンジニアをしている 22 新卒の高島です。社内ではたかてぃーと呼ばれています。 新卒で入社してから 3 年がそろそろ経とうとしており、あっという間すぎる 3 年目だったなと振り返りつつ、4 年目に向けた仕込みを進めています。
そんな私は 2 年目の 2023 年 5 月からチームメンバーを持ち始め、2024 年 4 月からはマネジメント役割を一部委譲してもらいピープルマネジメント(以降、マネジメントと表現します)を主導しています。 現在は 3 人のメンバーのマネジメントを担当しており、上長でありエンジニアリングマネージャーの石井さんと協力しながらチームの開発成果定義、メンバーの目標設定や定期的な振り返りを行っています。
本ブログではどうして新卒 3 年目の今のタイミングでマネジメントに挑戦したいと思ったのか、また実際にどのようなことをしているのかをまとめます。 また、そのような挑戦を経て実際に感じたことやぶつかった問題等も織り交ぜながらまとめることで、将来エンジニアとしてマネジメントにも挑戦したいと考えている方に少しでも参考になれば嬉しいです。
目次はこちら
プロジェクトリーダーの経験から見出したマネジメントの可能性
私は新卒で Speee に入社した際は Web 開発の実務経験は全くなく、1 年目は与えられたタスクをこなすのに精一杯でした。しかし徐々にできることも増え、2 年目には「コアとなる業務システムを一から構築し、既存の外部システムからスムーズにデータを移行する」という大規模プロジェクトのリーダーを任されるまでに成長しました。
プロジェクトは半年にわたり、エンジニアだけでなく多くのステークホルダーの方々の協力を得ながら完遂することができました。このプロジェクトを通して私は、「チーム全員が同じ目標に向かって全力で取り組み、達成したときの喜び」と「個人では到底成し遂げられない規模の目標もチームなら実現できる」という「チーム開発」の可能性を強く実感しました。
この経験から、マネジメントを通じて個々のメンバーの成長を支援することができれば、チーム全体の能力を高め、より大きな事業成果を実現できるのではないかと考えるようになりました。これがマネジメントに興味を持ったきっかけです。
プロジェクト完了が半期振り返りの時期と重なったというのもあり、上長の石井さんに「技術力も高めながら、少しずつエンジニアリングマネージャー(EM)を目指して、自分の貢献できる範囲を広げていきたいです!」という思いをすぐに伝えました。当時の私には「ピープルマネジメントする = EM になる」という単純な理解しかなく、具体的なキャリアビジョンがあったわけではないため、漠然と EM を目指すという形でしか表現できませんでした。 しかし、2 年目でのこのプロジェクト経験を通じて、「チームの能力を引き出し、開発の成果を高めることで事業を成長させる」という本質的な視点を得られたことは、私にとって大きな転換点となりました。
マネジメントへの挑戦で見出した成果のつながり
半期の目標設定に際して、1 年後に「エンジニアリングマネージャー(EM)」を目指すという目標を掲げました。しかし、当時の私は EM の役割や責務、そしてマネジメントについて具体的なイメージはできていませんでした。
そこでまず、上長である石井さんの仕事を観察し、EM として「何をすべきか、どのような役割を担うべきか」を自分なりに定義することから始めました。
私が定義した EM の能力と役割は大きく 5 つの要素からなり、その一つとして「ピープルマネジメント」が含まれていました。もちろん、実際の EM の責務はより多岐にわたるものですが、これが当時の私の理解でした。
これらの要素について自己評価すると、どの項目も理想的な状態(100 点)には程遠い状況でした。また、「理想の状態」自体も具体的なアクションレベルまで落とし込めるほど明確には描けていませんでした。
そこで、目標と現状のギャップを認識しつつ、まずは現実的な目標に落とし込むために、石井さんと相談しながら以下の 2 つを注力テーマとして設定しました:
- 事業と開発の統合的マネジメント
- 月次・クォーター単位での開発成果の定義
- 成果実現に向けた課題設定と解決
- ピープルマネジメント
- 開発成果から逆算したメンバーの目標設定
- 定期的な振り返りと成果支援
そうして、私が主導的に上記 2 つの役割や責任を石井さんから引き受けることになりました。 右も左もわからない状態からのスタートでしたが、石井さんには毎日 1on1 の時間を設けていただき、私の課題認識や困りごとに対して丁寧なアドバイスをいただきました。
以下では、この 2 つのテーマに関する具体的な取り組み、直面した課題、そこから得られた学びについてまとめたいと思います。
事業戦略を深く理解して開発成果を紡ぎ出す
最初に取り組んだのは、事業責任者の立案した戦略に対して「開発チームとしてどのような取り組みをすべきか」「どうすれば事業成果を最大化できるか」という問いに答えることでした。
まずは PdM と協働しながら月次レベルでの成果定義から着手し、チームとして何を達成すべきかを明確にしていきました。その後、徐々に考える時間軸をクォーター、半年程度まで伸ばしながら、目の前の実行における課題定義とアクション設定、実行と振り返りを繰り返すことで、包括的な開発戦略の立案と実行の精度を高めていきました。
しかし実際に時間軸を伸ばしていくと、事業責任者の考えている戦略やその先の理想状態が私の中で明確に描けず、メンバーに自分の言葉で語れない状態になるという問題にぶつかりました。
具体的には、事業責任者の戦略を表面的に理解しそれらしい言葉で開発成果を定義できてはいたのですが、二つの問題が発生していました。
一つは、その成果目標をメンバーが実感を持って追えない状態が続いたこと。もう一つは、目標が本来のミッションではなく単なるタスクの列挙のようになってしまったことです。また、事業責任者との会議の中で出てくる用語(粗利、ARR、ROAS など)の個々の意味は理解できても、それらの関連性が掴めず、事業戦略の本質的な議論についていけない状況でした。
これまで伝えてもらう側だった私が、今度は成果を定義し伝える側に回ることになり、ビジョンや成果を伝えることの難しさを痛感しました。
この問題を解決するため、事業責任者と何度も会議の機会を設け、ホワイトボードを使いながらミッションやビジョン、事業課題や戦略について丁寧に説明していただきました。私も事前準備として、P/L、B/S、C/F の読み方をインプットし、事業責任者の視点に少しでも近づこうと努めました。実際には P/L や B/S のインプットは不要だったのですが、それほど事業責任者が見ている世界と自分が見ている世界にギャップを感じていました。
こうした対話を重ねる中で、ビジョンや戦略、戦術を自分の言葉で書き直す作業を繰り返し、「自分の言葉で語れる状態」になるまで理解を深めていきました。その結果、私自身がワクワクしてきて、目指すビジョンを達成できたら本当にすごいぞ!と心の底から語れるようになりました。そして、少しずつではありますが、チームメンバーにも響く形で成果目標を設定し、共有できるようになってきたと実感しています。
DX エンジニア組織の開発成果の捉え方について、より詳しく知りたい方は、石井さんの以下の記事をご覧いただければと思います。
成果支援を通じて気付いた事業と個人成果のつながり
メンバーのマネジメントを始めるにあたり、まず「具体的に何をすべきか」を理解しようと試みました。具体的には、エンジニアリングマネジメントに関する関連書籍を読んだり、ポッドキャストを聴いたり、自身の 1 年目の振り返りログから過去のフィードバックやその背景を見返したりしました。
しかし、方法論的な面を中心にインプットを進めてしまったことで、マネジメント初学者の私には、抽象的な事例やテーマを自分の経験と結びつけることができず、「マネジメント」という言葉が独り歩きし、事業目標から切り離してマネジメントを捉えてしまう状況を作り出していました。
その結果、以下のような問題にぶつかりました:
- マネジメント手法が目的化してしまう
- ティーチングとコーチングの使い分けに固執し、状況に応じた柔軟な対応ができない
- コーチング一辺倒になったり、逆にティーチングばかりになったりして、メンバーの成長を妨げてしまう
- 過去の自分と重ねた自己投影的なフィードバックをしてしまう
- 自分の経験を基に「伝えたいこと」を押し付けてしまい、メンバー固有の課題に向き合えない
- 特に年次の近いメンバーに対して、自分の経験を過度に重ねてしまう
- 関係性重視による曖昧なフィードバックをしてしまう
- 「嫌われたくない」という思いから率直なフィードバックができない
- 課題を指摘しながらも過度に褒めてしまい、問題の本質が薄まってしまう
これらの問題に共通していたのは、課題を具体的なアクションに落とし込めないまま振り返りを終えてしまい、メンバーが主体的に課題に取り組めない状況を作っていたことでした。
このようなうまく回っていない状態に自分自身でも違和感を感じていたため、振り返りの場の目的と自分の振り返りスタイルを改めて言語化し、石井さんと対話を重ねながら改善を進めました。具体的には、メンバーに対して「振り返りはあなたの成長のために日々の困りごとを解決するための時間です。そのために私を使い倒してください」という姿勢を示し、この時間があくまでもメンバーのためのものであることを明確にしました。そして振り返りでは、開発成果に連動した個人目標と現状の差分から課題をメンバーとともに特定し、それについて徹底的に対話することに重点を置きました。
このように自分自身のスタンスから変えていくことで、振り返りの場で本質的な課題に向き合えるようになり、メンバー自身が事業成果との関連付けて自身の課題を捉えられるようになってきました。
振り返ってみると、方法論を先に学んでしまったことで、マネジメントそのものが目的化してしまっていました。本来、マネジメントは事業を成長させるための手段の一つであり、事業成果から逆算して個々のメンバーの成長を支援していくべきものです。
そうした観点を獲得していく過程で、「事業成果」「開発成果」「個人成果」の関係性や接続を構造的に理解できるようになったのですが、この構造理解は私にとって大きな学びとなりました。
具体的には以下のイメージのように、3 つの成果の接続が構造的に理解できるようになりました。
特に、これまでは 3 つの成果それぞれどのような数値や状態を狙っているのかすらイメージできていなかったのですが、開発成果定義の経験や日々のマネジメントを通して構造的に接続でき、そしてメンバーに対しても一貫して伝えられるようになりました。
目的を見失わずより大きな成果を目指して
半年前、私は「2025 年 4 月までにイエウール新規プロダクト開発チーム全体の結果責任を持ち、EM として事業を推進できている状態になる」という目標を立て実行してきました。しかし振り返ると、事業成果との関連を十分に考慮せずに突き進んでしまっていました。その結果、「私はどんな成果を実現したのか?」という問いに答えられず、事業が前進しているにもかかわらず、それを自身の成果として適切に評価できていませんでした。
この状況を分析してみると、「EM になること」自体が目的化し、事業にとってどのような価値を生み出せるのかを考えられていないという、手段と目的の逆転が起きていました。このような手段の目的化は普段の開発でも起こり得ることですが、自身の目標設定やマネジメントの実践においても同様の問題が発生していました。
これらの気づきを踏まえ、まず「事業から求められること」を定義し、その上で「私がなりたい姿」を重ね合わせ、目の前の事業を成長させていく過程で EM としての役割を果たしていくという形に、目標を再設定しました。
そして現在は、半年前に定義した「EM が担うべき能力と役割」は引き続き中長期的な目標として意識しつつ、この半年で獲得した知見や能力を活かしながら、より大きな成果をチーム全体で目指せるよう目の前の事業成果に向き合っています。特に、EM という肩書きにこだわらず、当初から目指していた「チームの能力を引き出し、開発の成果を高めることで事業を成長させる」という本質的な価値提供において、より強く事業貢献できるようになった今の強みを活かして、次のステップに進んでいきたいと考えています。
最後に
自分が今できることの 5 歩先くらいを狙って挑戦したがゆえに、たくさんの失敗もしました。しかしその度に、石井さんを中心とする周囲の方々から多くの支援をいただき、乗り越えることができました。
このような役割や責任を早期に委譲し挑戦できる組織の土台があるのは Speee の強みであり、大事にしている文化だと強く実感しました。
こうした新卒に大きな期待をし、挑戦を後押しする文化については、Speee 代表取締役の大塚さんが以下の記事で詳しく語っています。
実際に働く側からすると、このような文化はとてもありがたく感じています。 そして、これまで自身が享受してきた文化や組織を、これからは私自身が作り、育てていく側として新たな挑戦をし続けていきたいと思います。
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