Speee DEVELOPER BLOG

Speee開発陣による技術情報発信ブログです。 メディア開発・運用、スマートフォンアプリ開発、Webマーケティング、アドテクなどで培った技術ノウハウを発信していきます!

事業と技術のバイリンガル集団を目指して - DX事業本部が描くエンジニアの事業貢献モデル -

どうも。デジタルトランスフォーメーション事業本部 (以下、DX事業本部)エンジニアリングマネージャーの石井です。

前回、エンジニアとして事業に貢献するとは「Why-What-Howの一貫性を保ちながら、技術意思決定を積み重ねること」である という記事を書かせていただきました。

この当時は主に1つの事業に軸足を置いて活動をしていたのですが、現在は関わる事業も増え、DX事業本部横断の開発基盤チームと4つの事業の開発責任者を務めております。

今回は2年弱経ち、私自身の役割も変化した中で、改めて「SpeeeのDXエンジニアに求められる事業貢献や成果とは何か、またその魅力とは何か」について言語化したいと思います。

DXエンジニアに求められる事業貢献と成果について

成果とは何ぞや

まず前提として、我々は一人ひとりが大きな成果 (事業にとって必要かつその人にとって大きな成果)を出すことにこだわっています。なぜなら成果というものが、被評価者と評価者双方の主観やパーソナリティなどの影響を受けず、最も公正に評価し得るものだと考えているからです。

最もイメージしやすい成果は売上、利益のようなものですよね。いわゆるKGIに近いようなものは明確にビジネス上の成果と言えるでしょう。

ただし、成果というものはもっと奥行きや裾野があるものです。例えば「xx大学に合格する」という成果を追う過程で手前に「xx模試でA判定を取る」という中間ゴールや「毎日苦手な数学の問題集をxx問解く」というような行動目標があるように、

KGI = KPI × KPI × KPI × KPI × …

というKPI達成の積み重ねが大きな成果につながっていきます。

そしてKGI達成までの過程における各KPIの達成や、マネジメント責任を負う私の立場では「その創出過程におけるメンバー個々人の成長」、そういったものすべてが成果だと捉えています。

DX事業本部における開発の構造

では、エンジニアが追うべき成果とはどのようなものでしょうか。

私はまずDX事業本部における開発をざっくりと以下のような構造で捉えています (細かい話をし始めるとチームごとの差異はあるのですが)。

強調したいポイントとしては、「開発の貢献モデルはマーケティングやセールスのような、市場や顧客に相対しているメンバーの後方から開発を通じて資産を作り続けるような特性がある」という点です。資産を作り続ける能力を維持するために、技術的負債という名の利息を適切な額、適切な期限で返済し続けながら、事業として届けたい価値の提供にコミットしていきます。

現状のDX事業本部においてはプロダクト開発における「なぜ作るのか?」、「何を作るのか?」といったビジネス要求部分はプロダクト・マーケティングの責任者中心に決めるケースが多いです。そこからエンジニアが目的を理解して、システム要求 (仕様)、設計、実装方針を整理していくイメージです。また、後述するプロダクトの体験、性能まわりはエンジニアからもガンガン課題定義して提案していきます。

DXエンジニアの追うべき成果について

上記を踏まえて、私は以下のように成果のレイヤーを意識して、関係者と共にチームやエンジニアメンバーの成果定義を行っています。

  • 事業経営アウトカム (KGI)
    • 売上、利益、コスト (エンジニアの場合は開発人件費、システム利用費など)の削減などのKGIの達成
  • プロダクトアウトカム (KPI)
    • 戦略的なKPIの達成
    • 先行的なKPIの達成
      • 先行的に結果として現れてほしい手前側のKPI
      • 例) コンバージョンの手前のメール開封率など
    • あるべきプロダクトの体験、性能の実現 (いわゆる非機能要件的なもの)
      • 例)「ページロード時間をxxミリ秒以内にしたい」、「通知はバッチ処理ではなくリアルタイムでユーザに届くようにしたい」など
  • アウトプット / 開発生産性
    • 開発文脈での先行的なKPIの達成
      • 例) DORAメトリクスのようなものや開発計画の進捗 (リリース日の見立ての変化)

これらに対して以下のような観点で整理しながら成果定義を行い、ウェイト含めてブラッシュアップしていきます。

  • 新規事業 / 習熟度の低い業務 (実験的な取り組みがまだまだ必要な業務)ほどアウトプット側、先行的なKPI側にウェイトを置いて、投資や実行を積み重ねることを重視する
  • 既存事業 / 習熟度の高い業務 (一定成熟していて成果の出し方がある程度見えている業務)ほど事業経営アウトカム側、戦略的なKPI側にウェイトを置いて、投資回収含めた結果を出すことを重視する

チームの成果定義はマネージャーや責任者中心に、メンバー個々人の成果はメンバーとマネージャー中心に決めていくことが多いです。

このあたりを個々人のキャリア志向なども加味してバランス良くデザインしていくことで、プロダクトの顧客体験を向上させるようなエンジニアらしい挑戦と、「それが事業の何にヒットするのか」という事業視点を両立させた成果を皆で追っていきます。

DXエンジニアとして事業開発に携わる魅力

実際にどのように成果を追っているか

我々が進めている産業DXのような領域では、巻き込むステークホルダーが多く、まだ社会に存在しないようなプロダクトやサービスを開発していく必要があります。そのような状況において、関係者たちが常に同じ方向を向いて、共通の言語を用いて高速にPDCAを回していくことが重要です。

そして、大きな課題に多事業で挑んでいると、進めていくうちに「あれも、これも」と連続的に変化させていく必要が出てきます。そういった事業開発における、様々な変化のレバーを引ける所がSpeeeの事業開発に携わる魅力だと私は考えており、それはエンジニアメンバーに関しても同様です。

参考: Speeeの考える事業経営・事業開発とは

例えば、私が携わる事業の一つではユーザー体験の向上とデジタルプレゼンスの強化を成長戦略の核としています。事業のゴールはより多くのユーザーに価値を届け、サービスの認知度を高めることです。そのために、サイトのパフォーマンス改善とコンテンツ品質の向上に注力し、デジタル上での可視性を最適化することで、より広いユーザー層へのリーチを目指しています。

具体的には、サイトの表示速度や使いやすさの向上、そしてそれらを実現するための効率的な開発プロセスの確立に重点を置いています。

事業立ち上げ当初は業務委託メンバーを中心としたチーム構成でしたが、よりスケーラブルな開発アプローチの必要性から、内製チームへの移行を決断しました。この体制変更に合わせて、開発効率とユーザー体験の更なる向上を実現するため、技術スタックをNext.jsへと刷新しています。現在は、各種分析ツールやアクセスログのデータを活用し、チーム全体でデジタルマーケティングのナレッジを共有しながら、継続的な改善サイクルを回しています。

私自身も、技術面とユーザー体験の両軸で知見を深めています。Next.jsの公式ドキュメントや技術記事、ウェブパフォーマンスに関するベストプラクティスを学びながら、サイトの品質向上に取り組んでいます。日々新しい発見があり、マーケティング職のメンバーと協力しながら成果を追求していく過程はとても刺激的です。

このように事業を成長させていく中で、開発文脈においても「自ら変化を起こし、新たな課題の解決を主導していくこと」を皆にどんどん期待していきたいです。

DXエンジニアメンバーへの期待

我々は「エンジニアだからここまでしかやってはいけない」といった責任領域の決めつけはしません (もちろん職種や個人の強みを活かして成果を出してもらうことを優先しますが)。

  • 日々、技術研鑽に励んで自身がコントロールできる技術レバーを増やし、変化への対応速度を高めていく
  • 一方で、他職種のメンバーと協業する時間や顧客を理解するための時間も大切にし、事業合理性に基づいた意思決定、成果創出にこだわっていく
  • より大きな成果を出すために、信頼残高を増やして自身の影響力を高め、より多くの人を巻き込んでいく

そうやって様々なレバーを獲得し、責任者として自ら変化を起こしていく仕事は苦しいことも多いですが、非常に面白いです。

高い専門性や課題解決力を有したエンジニア、事業と技術双方の言語を使いこなせるエンジニア、など各々の強みを活かし合って、様々なDX事業課題や技術課題を解決していける、そういったエンジニア集団を作っていきたいです。

結び

昨今のAIの台頭により、ソフトウェアエンジニアという職業もただスキルをコレクトしているだけでは今後、AIに代替されてしまうリスクが高まっているのではないでしょうか。今後、エンジニア職に就く人間には事業目標を達成するためにどのように技術を使うか、そういった意思決定や成果創出がより求められていくと思います。

DX事業本部では、事業と技術に対する深い理解を持ち、変化に対応しながら今後直面する様々な課題の解決を推進してくれる開発責任者をどんどん採用、輩出していきたいと考えています。引き続き、事業やプロジェクトをどんどん立ち上げていく予定ですし、まさにスタートアップのCTOに求められるような大きな責任、挑戦機会をまだまだ沢山提供できます。

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